28,
2017

つづき(長いので興味がある方はどうぞ)
マリンメッセの最前列、左から3席目の少し前方にぼくは三脚を据えた。
暗闇のなかでスイッチを入れる。ワンカメによる定点観測のような映像撮影の始まりだ。
町支くんのカッティングが気持ちのいいリズムを刻むと、ベースとドラムがからみ、直ぐに浜田くんは後方に下がって行く。思ったとおりで、ぼくの好きなアングルは浜田くんの前後方向の動きを捉え始める。
だが曲が始まると同時にカメラが揺れ始めた。まずい!ひどいブレだ。だが仕方がない。観客席ギリギリに三脚をセットしているからノリ始めたアリーナ席の振動をモロに受けているのだ。ぼくは、やぶれかぶれでほんの少し三脚をずらす。すると、なんと、揺れが消えた。三脚をズラしたところに大きな違いはないのに、ピタッと画面は止まって録画が進んでいく。何が起きているのか分からないが、とにかく揺れは全く無くなっている。奇跡だ。
ステージを見ると浜田くんの歌声が素晴らしい、バンドの演奏もクオリティが高く順調に演奏は進んで行く。まるで演出でもしているかのように、浜田くんは前後の動きのなかで変化に富んだステージパフォーマンスを見せてくれている。ぼくがここで撮影していることなんて知るはずもないから自然な動きだ。「ON THE ROAD 2016 」最後となったマリンメッセ公演のアンコールだからなのか、リラックスした伸びやかな歌声に聴こえる。もう少しで長かったツアーも終わるという開放感を感じる。バンドも楽しそうだ。
長田氏が粘っこいギターソロを決めると、後半に突入し、そのままカッコいいパフォーマンスは続いて行く。ワンカメで撮るしかなかったぼくの撮影にバンドも動いて応えてくれているかのようだ。
やがて、無事に歌が終わり最後の動きを緊張気味に待っていると。浜田くんは、なんと、ぼくのカメラ方向に向かって近づき始めた。慌ててピントを合わせる。これは二回目の奇跡だ。もし反対側の声援に向かって応えていたら失敗だったが、ステージ真横のぼくが居る方の観客の声援に向かって応えている。これでカッコいい最後の動きが真正面から捉えることが出来たのだ。
エンディングのサックスに合わせて浜田くんがバンドの方に振り返ると、その背中は4分44秒の演奏の終わりを告げていた。
どの場面も絵になっていた。何も言う事はないほどの素晴らしい映像が記録されていた。
ぼくが撮っているいつもの写真がそのまま動いたのだ。福岡までやってきて良かったと思った。
「浜田島」ならではの作品がひとつ出来たことが嬉しかった。
こんなゲリラ的な撮影映像の「浜田島」での上映を許してくれた浜田島委員会に感謝。
「浜田島」という特別な空間でしか発表出来ない映像。
たまにはスイッチング無しのワンカメによるライブ映像を楽しんで欲しい。
これは2017年4月27日、福岡マリンメッセ、アリーナの最前列、左から3席目で観た浜田省吾の真の姿なのだ。
田島照久